お知らせ

ワンちゃんの避妊手術について(犬・メス♀)

犬の避妊手術の適切な時期

ワンちゃんの避妊手術について「いつ頃がいいのか?」と悩まれる飼い主様は多くいらっしゃいます。

ワンちゃんの健康で幸せな一生のために、知っておきたい避妊のタイミングを、桑原動物病院が推奨する個々のワンちゃんに適した避妊手術の時期とその理由について、わかりやすくご説明いたします。

■ 出産を希望する場合は個別相談を

まず、将来的に子犬を迎える予定がある場合は、出産を終えたあとに個別相談を行い、適切なタイミングを一緒に考えていきます。

■ ワンちゃんの健康を守るために:初回発情前の避妊を推奨

出産の予定がないワンちゃんに関して、当院では初回発情(生後6~8カ月齢前後)を迎える前の生後5~6カ月齢頃、とくに乳歯が永久歯に生え変わる時期に避妊手術のご相談をおすすめしています。

その理由は以下のとおりです。

  1. 子宮・卵巣の病気を予防し、寿命の延長に寄与

避妊手術により、将来的に発症リスクのある子宮蓄膿症や卵巣腫瘍などの重大な病気を未然に防ぐことができます。とくに子宮蓄膿症は命にかかわることもある病気であり、若いうちの予防が非常に重要です1)

  1. 乳腺腫瘍(乳がん)の予防効果が大きい

初回発情前に避妊手術を行うと、乳腺腫瘍の発生率が約1/200(0.5%)まで抑えられると報告されています2)。一方、2回以上の発情後に避妊した場合は、この予防効果はほとんど得られません。

  1. 性格や行動への影響も

一部の研究では、避妊手術を思春期前に行うことで、攻撃性などの問題行動が軽減される可能性があると指摘されています。ただし、性格形成には個体差があるため、あくまで一因として参考にしてください3)

■ 発情を待ったほうがよいケースも:陰部の皮膚が覆っている犬種

一方で、すべてのワンちゃんが初回発情前の避妊手術に適しているわけではありません。

例えば、陰部が皮膚に覆われていて見えにくい犬種(とくに短足・小型犬に多い)では、しわの間に細菌がたまりやすく、将来的に細菌性膀胱炎や外科的処置が必要な炎症につながるリスクが高いと報告されています4)

陰部にしわがある犬種(周囲を毛刈りしています)
犬の陰部

このような場合は、1回目の発情を迎えて陰部の発育が整ったあと、生理終了から約3カ月を目安に手術を計画することを当院では推奨しています。

■ 避妊手術は義務ではありません。まずはご相談ください

避妊手術は健康維持のために有効な選択肢のひとつではありますが、義務ではありません。生活環境や性格、体質などをふまえ、飼い主様の考えとしっかり向き合いながら、手術の是非を一緒に考えていくのが桑原動物病院の方針です。

不安な点があれば、いつでもお気軽にご相談ください。

避妊手術の予約の前に

初診の方は、お電話での「避妊手術」の予約はできません。
一度ワンちゃんと一緒にご来院いただき、ワンちゃんが手術可能な健康状態か確認してから、手術日をご予約いただくという流れになります。
「避妊手術・去勢手術の相談」でのご来院は予約は必要ありませんのでご都合のよい日時にご来院ください。

また、手術の前にはワクチンによる感染症予防、ノミ・マダニ予防薬(動物病院処方)によるノミ・マダニなどの寄生虫の駆虫と予防の実施を、皆さまにお願いしております。
ワクチン接種をお済みでない方はこちらのページもご参照ください。

手術前の予防・検査、手術日の流れ、手術後についてはこちらのページもご参照ください。

どんな手術?

ご予約日の午前中に来院いただきます。お水とご飯を抜くことを忘れないようお気をつけください。なお、ご予定等で当日の朝に来院するのが難しい場合は、前日からのお預かりも可能です。

午前の診察が終わり次第、準備が整いましたら始めます。
麻酔導入後、心電図、SpO2、EtCO2、血圧、体温をモニタリングします。
おなか側を広範囲に毛を刈り、消毒をしっかりと施してから手術を開始します。

腹部を正中切開し、卵巣・子宮の状態を確認したあとレーザー等で止血処置しながら卵巣を両側とも摘出します(レーザーによる不妊手術(去勢・避妊手術))。
もしも子宮に異常が認められた場合は、子宮も摘出します(卵巣摘出術と卵巣子宮摘出術の選択について)。

術後は点滴を続けながら、麻酔からの覚醒・回復の状態を観察します。しばらく様子をみて退院可能と判断したら、その日の夕方退院という流れになります。

避妊手術のデメリット

・手術後に繁殖させたくなっても不可能です
卵巣を外科的に切除しますので、切除後はもとに戻すことはできません。したがって、繁殖は不可能となります。

・太りやすくなります
食欲が増加する場合がありますので、摂食量を適正に保ち、適度な運動を心がけましょう。
体重が増えすぎると別の病気のリスクが高くなりますので、体重管理を意識してください。

外部リンク:犬の体重管理と適正体重の維持の秘訣- ロイヤルカナン – ロイヤルカナン (royalcanin.com)

・麻酔のリスクがあります
全身麻酔をかけますのでリスクは0%ではありません。手術の前に検査を受けることをお勧めしています。
術前検査として、薬の代謝機能・止血機能を確認する血液検査や、横隔膜ヘルニアなどの胸部の確認のためのレントゲン検査等をご提案しております。

料金について

こちらのページをご確認ください。表示価格+消費税となります。
また、混合ワクチン接種済みであることと、ノミ・マダニ予防薬(動物病院処方薬)の投与をお願いしております。

【参考文献】
  1. Johnston, S. D., et al. (2001). Canine and Feline Theriogenology. WB Saunders.
  2. Schneider, R., Dorn, C. R., & Taylor, D. O. N. (1969). Factors influencing canine mammary cancer development and prognosis. Journal of the National Cancer Institute, 43(6), 1249-1261.
  3. Spain, C. V., Scarlett, J. M., & Houpt, K. A. (2004). Long-term risks and benefits of early-age gonadectomy in dogs. Journal of the American Veterinary Medical Association, 224(3), 380-387.
  4. Bartges, J. W. (2015). Diagnosis and treatment of urinary tract infections. Veterinary Clinics of North America: Small Animal Practice, 45(4), 733–749.

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