お知らせ

膝蓋骨脱臼(前編)

好発犬種

小型犬に内方脱臼多く見られます。大型犬種に外方脱臼が散見されます。
ダックスフンドに外方脱臼、トイプードルに両側性の脱臼も近年、散見されるようになりました。

症状

「たまに後足を上げることがある」
「膝から音がする」
「歩き方が他の子と違う気がする。」
「立ち方が内股」*外方脱臼
「立ち方がガニ股」*内方脱臼

特徴

初期は痛みを伴わない事が多いため、この病気だけで病院に来ることは多くありません。
ワクチンのついで、外耳炎のついでといって何かについでにオーナー様から聞かれる
または
初診時の健康チェックで獣医師から指摘される等
飼い主様が病気と認識していなケースも多く見受けられます。
痛みを伴わないため症状は軽く、grad4でなければ日常生活に大きな支障もありません。
大事なのは初期症状ではなく、その数年後を見据えることにあります。
痛みを生じるようになるのは数年後になります。
変性性関節症、前十字靭帯断裂、長趾伸筋腱断裂
等の合併症を伴って初めて痛みの症状がでます。

グレード分類

グレード1:屈伸運動および内旋、外旋運動中に外れることもなく、用手にて脱臼を誘発する事が可能

グレード2:屈伸運動中に脱臼する事があるが、間欠的であり患者自身で整復可能な脱臼

グレード3:常に膝蓋骨が脱臼している。用手にて整復可能だが手を離せば再脱臼してしまう状態

グレード4:常に膝蓋骨が脱臼しており、用手にて整復する事も不可能な状態

診断

膝蓋骨脱臼の診断は視診、触診を中心とした身体検査で行います。グレード分類も身体検査で実施します。

治療指針

1.成長期(出生〜8ヶ月前後)
体が特に大きく成長するこの時期は成長とともにグレード分類が変化するため定期的な経過観察が必要となります。
この時期にグレード3~4と分類された症例は成長とともに骨変形がより重度となるため、迅速な診断および治療が必要となります。
2.若齢期(生後8ヶ月〜2歳前後)
体の成長は生後1年半まで続きますが,この頃は急激な体格の変化を終えた時期にあたります。
低グレードであってもこの時期に今後の治療方針を相談の上決定します。
持続的な痛みを伴うようになるのは膝蓋骨脱臼を原因とする合併症が出てからになります。
「痛みが出る前に治療するのか」か「痛みが出てから対症療法を実施するのか」を選択する事になります。
関節軟骨は消耗品であり、損傷を受けると再生する事はありません。また、
痛みが出てから対症療法を実施しても損傷部位が治るわけでもありません。
痛みが出てからの対症療法というのは施術後の関節症の進行を遅らせるための治療になります。
この時期の治療目的は膝蓋骨脱臼を整復し、屈伸運動、旋回運動時に生じる脱臼を整復し関節軟骨の損傷を予防する事にあります。
3.発症期
変性性関節症、前十字靭帯断裂、半月板損傷等の合併症を伴い、慢性的な疼痛症状を示すようになった段階をさします。
この時期の治療は疼痛緩和、関節炎の進行を遅らせる事が目標になります。脱臼を整復するだけでは症状が改善しない場合もあります。
外方脱臼は長趾伸筋腱断裂を併発する可能性が高いため、発見した時点で矯正手術の実施が推奨されています。

 


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