中耳炎とは?
耳は外側から順に、耳介→外耳→鼓膜→中耳→耳管→鼻へとつながっています。
中耳炎は鼓膜の内側の中耳で起きる病変で、中耳に耳垢や滲出液などの貯留物がたまっている状態です。鼓膜が破れている場合もあります。
中耳炎の原因は大きく分けて次の3つです。
・外耳炎が起きて鼓膜が破れ、中耳炎に移行する
・口腔や鼻から耳管を経路して中耳に感染が移行し、中耳炎となる
・真珠腫性中耳炎:短頭種によくみられる。現在のところ発生原因は解明されていないが、短頭種特有の頭部の構造から中耳内に耳垢や滲出液などがたまりやすいと考えられている
2022年のRiccarda Schuenemann氏らの研究で、短頭種気道症候群の犬の中耳状態を調査したところ、対象の犬の32%で中耳内に滲出液の発生が認められたという結果が報告されています(参考文献:Prevalence and characterization of middle ear effusion in 55 brachycephalic dogs,2022,Riccarda Schuenemann, Anne Kamradt, Katrin Truar, Gerhard Oechtering)。短頭種の犬は中耳炎になりやすい傾向にあるようです。
中耳炎の治療は?
・点耳薬・内服薬
・外科手術(鼓室胞骨切り術・全耳道切除)
・ビデオオトスコープ(Video Otoscope)による保存療法
短頭種の中耳炎は、耳管からの感染もしくは真珠腫性中耳炎が多く、点耳薬や内服薬では改善しにくいことがあります。
点耳薬や内服薬で改善が見込めない場合、鼓室胞骨切り術や全耳道切除などの外科的治療が従来では選択されていましたが、近年、ビデオオトスコープの導入により切除せずに維持していく保存療法が、治療法の新たな選択肢として加わりました。
ビデオオトスコープによる保存療法では、耳道の奥までモニターで観察しながら鼓膜を穿刺して中耳内の貯留物を洗浄除去します。貯留物は再発する可能性が高いため、定期的に洗浄処置を行うことになります。
外科的治療の場合、根治する可能性はありますが、術後合併症や再発のリスクもあります。
中耳内の洗浄による保存療法も限界はありますが副作用のリスクは外科手術と比較すれば少ないため、外科切除を実施する前に、ビデオオトスコープによる保存療法で維持していくことも有用な治療プランだと考えられます。