橈骨尺骨骨折は前足の骨折(橈骨と尺骨)のことで、小型犬(プードル、チワワ、ポメラニアン、パピヨン、ヨークシャーテリア、イタリアングレーハウンド等)に多くみられます。飼い主様の手の中からあるいは椅子/机くらいの高さからの落下等が主な原因で骨折します。遠位1/3~1/2前後の骨幹あるいは骨幹端の斜骨折が多く認められます。解放骨折、粉砕骨折の併発は少ないため、殆どの症例で解剖学的整復が可能です。不完全な解剖学的整復および不適切な軟部組織の取扱い等によって生じる癒合不全(骨がくっつかない)やストレスシールディング現象(インプラントの強度が強すぎて骨癒合に至らない、あるいは癒合後に骨がやせ細っていってしまい、再骨折してしまう現象)等の術後の合併症が散見されます。患者に合わせた適切な術式およびインプラントの選択が重要となります。当院では外科的治療に力を入れており、これまでに多くの手術を経験しています。
1.プレート固定
当院では橈尺骨骨折の多くの症例にプレート固定を適用します。術後管理の手間が他の治療法と比較し、少ないため、退院後の通院頻度が少なくて済む利点があります。
2.髄内ピン固定
成長板骨折、骨幹端骨折、超小型犬(1kg前後)等の症例でプレート固定が困難な場合に選択する治療法の1つです。プレート固定と比較し、固定強度が弱いため外固定の併用が必須となります。術後早期は外固定のによる厳密な管理を必要とするため、術後管理がやや煩雑となる欠点があります。
3.創外固定
骨癒合後のインプラント抜去が比較的簡単という利点があります。インプラントの一部が体外に出るため、定期的な包帯交換や器具で遊ばせないためのエリザベスカラーの装着が必要となります。骨癒合までにかかる期間、患者の性格などを考慮する必要があります。
4.外固定
骨折はしているが骨折線の変位のない橈尺骨骨折(骨膜が切れずにいる事が予想される症例)は外固定のみで経過観察する症例もいます。施術後早期はまめに経過観察する必要があります。