お知らせ

骨の治り方 橈尺骨骨折を例に 犬 

イタリアン・グレーハウンドの両前肢骨折

右前肢

左前肢

 

 

右前肢はLag Screw固定の併用が可能だったので1期癒合

 

 

 

左前肢は中和プレートのみなので2期癒合を目指します。

*術後早期は外固定を併用します。

 

 

 

 

 

 

治療の仕方で骨の治り方は異なります。治癒の過程を理解していないと、

術後の経過を正しく評価する事ができません。

右前肢は骨片間圧迫を加えているため、骨折端同士が直接癒合します。

そのため仮骨形成が少なく、早期に癒合します。

術後19日 右前肢は治療終了です。

同じく術後19日目 左前肢

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

左前肢は2期癒合を目指すので、術後2,3週間前後のレントゲンでは

周囲に仮骨形成を認め、また、

骨折部の骨が溶けているように見えます。

これは骨再構築(骨芽細胞、破骨細胞、両方の活動によるもの)

されて起こる現象なので問題ありません。

インプラントの折損、明らかな動揺は認めません。

固定強度は右前肢のが強く、跛行の回復も早いはずですが、

このイタグレさんは手術直後から左前肢をより使ってました。

この段階でもしっかり負重し、歩いています。

左前肢を右より先に積極的に負重する事は想定外でした。

もう少し強度を高めておけば、よりこの時点でもより

仮骨形成を認めたと思われます。

 

治療経過はレントゲンだけで判断できません。

順調に足への負荷が増えていることも大切です。

痛みが取れて、過度に暴れる事も問題ですが、

ケージレストに拘り、骨への負荷が少ないと

骨癒合が遅れる原因にもなります。

歩き方、レントゲン、患者の性格、飼育環境を考慮しながら

外固定の有無や運動制限の程度を調整していきます。

今回は

術後2週間まで

手術+外固定+安静(室内)、排尿排便の散歩は退院直後から許可

術後2〜4週間の間に

安静の解除と外固定の抜去をします。

およそ術後5週で全ての制限を解除

術後8週間で骨癒合の最終チェックを行いました。

 

橈骨への治療が適切に実施されていれば、尺骨は並置しておくだけで癒合します。*小型犬

中和プレート単独では固定強度が足りないため、術後早期は外固定を併用します。

初期固定は強めに、経過とともに不安定化(destabilization)させていきます。

インプラントの強度が強い方が術者としては安心かもしれませんが、

強度が強すぎると骨が育ちません、

弱すぎれば仮骨は出ますが破綻するリスクを伴います。

適切な強度のインプラントを選択する事が大切です。

 

治せる骨折は解剖学的整復、元通りに治します。

ズレて骨がつくと肘や手根関節に長期的に負担をかけます。

 

その後、紹介いただいた先生もとで去勢手術と同時にネジの間引きを実施しています。

内固定の全抜去を実施する場合、少なくとも術後2週間くらいは外固定の再設置と安静が必要となります。

螺子(ネジ)の間引きだけなら術後の安静も外固定も必要ありません。

右前肢

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

左前肢

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*写真なので写りこみをカットしています。

 

橈骨・尺骨ともに癒合してますし、

橈骨の髄腔もきちんと確認できます。

極端な骨硬化像も認めないので経過観察終了としました。

 

外固定が困難な症例には初めから強度を上げて治療しますし、

仔犬でインプラント全抜去が前提であれば創外固定を第一選択にする事もあります。

当たり前ですが、

 

治療原則を守って治療すれば、合併症の発生率は低く、

また解剖学的に整復する事で長期的な関節への合併症も防ぎます。

若木骨折のように

変位が殆どなければ外固定のみで治療する事もあります。

橈尺骨骨折に対する創外固定の適用ですが、遠位骨折なら良いのですが

近位骨片を用いる場合、特にTypeⅡ以上を適用すると、骨は薄く、軟部組織も多いため、

合併症が出やすいので注意が必要です。

 

骨折:解剖学的整復 生物学的整復

前腕変形 変形矯正骨切り術

 

名古屋動物医療センター

↑学生時代の恩師

ONE千葉どうぶつ整形外科センター

↑千葉県にある動物整形外科専門病院 小林先生(後輩)

東京大学動物附属医療センター

↑整形外科の本阿彌宗紀先生(後輩)

埼玉動物医療センター

↑整形外科の福田先生(先輩)

 


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